2026年7月31日

【導入事例】校舎全体が新しい学びの場に。ICT機器をフル活用した実践の数々、ゴールは「人を育てること」|伊豆市立伊豆中学校(静岡県)

静岡県伊豆市は、平成16(2004)年に修善寺町・中伊豆町・天城湯ヶ島町・土肥町の4町が合併して誕生した自治体です。伊豆中学校は、その内の土肥町を除く旧3町に1校ずつあった、修善寺中学校、中伊豆中学校、天城中学校が統合し令和7(2025)年4月に開校しました。

旧3町の思いや、市長の「日本一の学校を作りたい」という意向を受け、新たに建設した校舎には地元伊豆市内の山で伐採したヒノキを使用し、ICTは最新機器を導入するなど、自治体が熱い思いで創立した学校です。「従来のやり方にこだわらず、様々な使い方を模索している」という伊豆中学校の事例を取材しました。

同校では開校直前の令和7(2025)年2月に全普通教室にウルトラワイド超短焦点プロジェクター「ワイード」(電子黒板機能付き)、映写対応「ブルーグレー黒板」、黒板着せかえパネル「KisePa」を導入しました。メディアセンターには床から天井までを埋め尽くす壁面ホワイトボードを導入しました。

伊豆市立伊豆中学校(静岡県) 提供=伊豆市教育委員会

【基本情報】
生徒数:約450人
学級数:1、3年生5クラス、2年生4クラス+特別支援学級
(令和8年6月時点)

【ICT機器・ツール 】
教員、生徒:1人1台のコンバーチブル型Chromebook
教室:ウルトラワイド超短焦点プロジェクター「ワイード」(電子黒板機能付き)、映写対応サンヤクブルーグレー黒板+黒板着せかえパネル「KisePa」(教室)、ホワイトボード(特別教室)、接続:エルモキャスト(無線)、HDMI
授業支援ツール:ロイロノート

【取材にご協力いただいた方々】
伊豆市立伊豆中学校 駿藤校長
教員の方々:高安先生(国語)、杉本先生(特別支援学級)、大村先生(数学)、小山先生(社会)
伊豆市教育委員会 教育部学校教育課主幹 杉山様

全ての普通教室にワイード+ブルーグレー黒板+KisePaを導入

 ワイードとは、一般的なプロジェクターの画面サイズ(4:3)がちょうど二つ並ぶ、ワイドな画面サイズで投影できる学校向けプロジェクターです。黒板に画像を直接映写できるので場所をとらず、従来の授業スタイルを尊重した形で柔軟なICT教育が可能になります。

ブラウザのタブを2枚並べている。2系統の同時出力ができるので、2台の端末の画面を並べることも可能

ブルーグレー黒板とは、プロジェクターの映像が見やすいように、表面に特殊な加工を施した黒板です。投影画面の上からチョークで書き込みできるので、チョークに慣れた先生にとっては使い勝手のいい製品です。

板書が減り、見てほしい箇所が明確に伝わる

従来の黒板と同じように使えて、投影画面も見やすい

「以前の学校で使っていたプロジェクターでは、画面が小さすぎてデジタル教科書は使えませんでした」と国語の高安先生は振り返ります。最大130インチという、ワイードの大きな画面によって、初めてデジタル教科書を授業で使えるようになったといいます。

「デジタル教科書を使うことで板書の量が減り、効率的に授業を進められるようになりました。また、授業中に教科書のどこを見てほしいのか明確に共有できます。生徒も、授業についていきやすくなっていると思います」

画像の余白にマーカーでイラストを描きながら、イカの体の仕組みについて説明している

KisePa(キセパ)は黒板に貼り付けて使えるホワイトボードパネルです。8枚で黒板サイズの約130インチ(16:6)になります。普段の授業ではブルーグレー黒板に画像を映す方式が早いですが、動画や画像などを特にきれいに見せたい場合には、背景が白いKisePaを使ったほうが見やすくなるようで、授業に合わせて使い分けているとのこと。

また、KisePaはマーカーで書き込みができるため、グループワークに最適です。取材当日に行われた道徳の授業では、教科書の内容について各班で1枚のボードに意見をまとめ、黒板に貼って話し合ったそうです。
※KisePaのサイズ:横840mm × 縦550mm × 厚3mm_625g(1枚あたり)

教科ごとの使用例

各教科の先生方に、普段ワイードをどのように授業で使っているかをお聞きしました。

お話を伺った先生。左から大村先生(数学)、杉本先生(特別支援学級)、小山先生(社会)、高安先生 (国語)
「ロイロノート」で生徒が作ったノートを黒板に映して共有できる

<国語>
高安先生(国語):例えばクマゼミが出てくる説明文の単元では、クマゼミがどんなものかを音声付きで見せて「これを今からやるよ」などと、インパクトのある導入ができます。

また、プレゼンテーションの単元では、生徒が端末でシートを1枚完成し、それを大画面に映して発表しています。自分で作った画面で、自分で喋るので、発表をしている実感があると思います。

今は教科書にICT機器の使用を意味するICTマークが入っていて、教室に機材があることが前提なのですよね。使いたい時に使えるのは、本当にありがたいです。

<社会>
小山先生(社会):社会でも、生徒が発表する時には、とても役に立つなと思っています。生徒の画面をエルモキャスト(無線)でつなげて黒板に出すことができ、順番につなげてテンポ良く進められるので、時間を短縮できます。準備のための時間が短くなったので、授業の効率が良くなりますね。

<数学>
大村先生(数学):数学の分野で言えば、デジタル教科書を使うと計算などは板書の量が減るので、効率がいいです。それから、関数や図形は手で描くよりも、教科書を映したほうが的確なので、生徒が分かりやすい情報を提供できていると思います。

グループ発表や生徒主体のレクリエーション、別室登校生徒の遠隔授業も

1階メディアコモンズの大画面で、授業やレクリエーションを行っている

3年生の生徒にワイードを使った授業についてインタビューしました。
「見やすくて分かりやすいし好きです。先生の面倒がなくていいなって思う。板書が減るから授業も早いし、楽しいです。あとは学校のレクリエーションでクイズをやる時も大きな画面で見られるから、いいんですよね。たくさん使っています」と、すっかり気に入っているようでした。

「子どもはすごいですね。校舎のスペースと組み合わせて、いろいろなアイデアがどんどん出てきます」。校長の駿藤衛先生は、ICT機器の様々な使い方について説明してくださいました。

伊豆市立伊豆中学校 駿藤校長

「広報委員会は、昼休みにメディアコモンズの大画面でクイズをやっているのですよ。無線で飛ばして教室でも見られるので、教室から参加している子もいます。『答えは、ABCDどれでしょう?』と言って子どもが回答すると、すぐに集計が入って。2問、3問と続いていくと、『トップは誰々です』と中間発表も行っている。テレビ番組のような感じですね。当初は思いつかなかったような使い方が、どんどん出てきています」

廊下まで広く使える共有スペース。写真左はメディアスペース

また、学校併設の「いず中カフェ」では、教室の授業に出られない生徒がカフェに別室登校し、遠隔授業を受けているといいます。教室に入らなくても、オンラインで結んで自分のクラスの授業を見ながら学習でき、出席扱いになるそうです。

教員から使い方の提案もあるそうです。去年出たアイデアでは、広い1階の空間に1学年3クラスを全員集め、そこで各クラスが国語、数学、社会とそれぞれの授業を同時進行する。そして途中で、例えば国語と社会で重なる内容が出てきたら、一つの空間で一緒に授業をするという案が出たそうです。「1時間全部ではなく、ある場面では一緒に、そこから先は各クラスに戻る。大画面を使って、そんなふうに教科横断的な授業もできるねと話しています」

壁面いっぱいにホワイトボードが貼られたマルチメディアルーム

壁面に天井までホワイトボードを貼ったマルチメディアルームは、グループ発表によく使われています。ホワイトボードは4面あるので、 4つのグループに分かれて、各グループが同時進行できます。途中でいったん止まって「ちょっと、他のグループの意見を聞いてみよう」ということもできるそう。

「義務教育の段階では、教師が一方的に講義するだけというよりは、子どもが主体的に動くことをより重視します。本校もそんな授業づくりをめざして、工夫を重ねているところです」と校長先生。

物を大きく映すとか、動画が使えるとか、あるいは意見を集約するとか。そういったものについてはICT機器は本当に便利なので、必要な場面ではしっかり使いたい意向です。
一方で世界の動きを見ると、アナログの良さが見直される傾向もあり、そこにも目を置いていきたいと駿藤先生は強調します。「デジタルだけが授業の正解とは限りません。手で書くことも大事にしたいですし、喋る方がタイピングより得意な生徒もいます。要はよりよい授業づくりが根本にないと宝の持ち腐れなので、授業づくりという我々が本筋でやっているものでしっかりと力をつけ、その中でICT機器を効果的に使う。これが伊豆中の目指す授業です」

目的に沿った、効果的な使い方を考えることがポイントのようです。

説明会に参加した教員の、ほぼ全員が導入に賛成

伊豆市教育委員会 教育部学校教育課主幹 杉山様

「新校舎に導入する黒板は、従来の枠にとらわれない新しいものにしたいと考えていました」

教育委員会の杉山さんは、サカワのICT機器に注目した経緯をそう語ります。

「ブルーグレーの黒板は、従来の緑色の黒板と比べてプロジェクターの映像がはっきりと見えやすいという大きなメリットがあります。それに超短焦点プロジェクターを組み合わせた一体型の提案を知り、サカワさんに強く関心を持ちました。一般的なスタンド型の電子黒板は、画面サイズによって後ろの席から見づらかったり、教室内での導線を妨げたりする課題があります。黒板全面を活かしながら大画面で ICT を活用できるワイードのような製品こそ、私たちが求めていたものでした」

新校舎のコンセプトに合致し、学びの可能性を広げるICT環境として、ワイードの導入構想が動き出します。

EDIX東京で直接サカワのスタッフと対話し、手応えを得た杉山さん。その後、市内の小中学校全校から集まった代表教員約30名を対象に、サカワのスタッフによる説明およびデモンストレーション・質疑応答を実施しました。
実際に体感した各校の代表教員へのアンケートでは、実に9割から賛成の声が上がったといいます。

「現場の先生方の圧倒的な支持があったからこそ、導入に向けた合意形成は非常にスムーズでした。約1年間の設計期間の中でも検討は極めて迅速に進みました」

その後も現場との対話を重ね、講義を中心とする普通教室には黒板、視認性や用途を重視する特別教室にはホワイトボードを採用するなど、授業空間の目的に応じた最適な配置がなされていきました。

伊豆市内の公立学校に全面導入を予定

現在、伊豆市内の中学校や義務教育学校の普通教室でワイードが導入済みです。小学校では、既に5~6年生の全普通教室に設置。本年は3~4年生の教室に、来年には1~2年生の教室に導入し、これで伊豆市内の全ての普通教室にワイードが完備される予定です。

「各学校の情報担当の先生が年に数回情報交換と研修を行っていますが、まず伊豆中学校を見たいという話になります。そこで、伊豆中で研修を行い、実際に触れると『自分たちの所にも入れてほしい』と要望が出るので、自然に決まりました」と杉山さん。
伊豆市では、こども園からICT教育を実践しているため、保小中一貫でICT教育を行っていることになります。幼少期から機器に慣れて、小学校、中学校でレベルアップして高校に送り出す。

「一貫して同じ機材を使っていたほうがスムーズに進学できるので、そこも大事にしています。子どもの時からデジタル環境に慣れて、ICT機器を当たり前に使ったり調整したりできることは、社会に出るための一つの武器になると考えています」
伊豆市では、リテラシー教育も同時に進めつつ、今後は調べ学習などにAIを活用する方法も検討中とのこと。「いきなり答えを教えないで、問いを立ててくれる学習用のAIが出ているので、導入を検討したいと考えています」

これからの教育について杉山さんは、ICTを一つの手段として使い、生きづらい世の中を上手に生きていける子を育てたいと思いを語ります。「昔は勉強ができれば優秀な子だったと思いますが、今は価値観が変わってきていると思います。情報機器を柔軟に使って選択肢を広げ、自分の強みを知る。それも、今の時代だからできることだと思っています」

校長先生と杉山さんの一致した意見は「ゴールは人を育てること。ICTは手段の一つ」でした。サカワのICT機器は効率的で分かりやすい一斉授業を実現し、他方では個々に寄り添う教育も可能な柔軟なツールです。取材を通して、ワイードやブルーグレー黒板、KisePaが先生方のゴール実現に様々な形で役立つ、有効な手段であることを実感しました。

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